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(Realstic&Artistic Architects)
【BIMモデリングについて】
現在RevitをはじめとするBIMモデリングが主流になりつつありますが、今まで2次元作図で行ってきた設計図書や施工図全てをBIMで完結するには非常に難しい問題を抱えております。
AutoCADのようなソフトでもいかに作図を楽にするかと言う事も重要ですが、経験年数はもちろんのこと、社内ルール等を網羅したテンプレートの作成やカスタマイズが重要です。
柱や壁等は当然3次元でモデリングしていきますが、従来通りの2次元の図面を「完成形」とする場合、寸法や文字を描き込んでいく必要があります。
この方法には2次元CADと同様の手法で記入する方法もあれば、あらかじめ設定された項目を自動的に記入してくれる「タグ」と言われるような記号のような物も存在します。
まずこの概念の習得が難しいように思います。
簡単な建物は比較的簡単にBIMでモデリングできますが、ちょっと変則的な納まりや複雑な形状を作るのが難しいと感じます。
よく「BIMはフロントローディングが可能」と言われますが、それは設計段階でBIMの導入を前提とした話で、設計会社と施工会社が別の場合、設計→施工と言った流れで円滑にする事は難しい問題も抱えています。
そう言った事からBIMでの基本設計から始まり実施設計図で詳細を煮詰めて、さらに施工図を作成していくと言う「理想の姿」がなかなか大変な事だと思います。
それはBIMソフト自体が施工図レベルでの表現が難しいと言った個人の技術レベル以外の問題も抱えております。
とは言っても何もしなければ何も始まらないので、まずはできるレベルから取り組んで行き、徐々にレベルを上げていくことが大切だと感じております。
【段階的な無理をしないBIMでの設計手法】
1. なるべく簡単な建物規模の小さい物件・建物形状がシンプルな物件から導入する
➡大手ゼネコンが手掛けるような大規模物件でいきなり導入するには、相当な勉強と経験が必要です。ですのでなるべく小さな物件(1K・1LDKの賃貸マンションなど)から導入する。
➡木造や鉄骨造などはRC造に比べて部材が多いため、木造で大引や根太などもモデリングする場合よりは、RC壁式構造の方が簡単です。
2. 確認申請・基本設計レベルでのみ導入する
➡設計段階で確認申請・基本設計のみでモデリングして実施設計は従来通り2D作図で行う方法は最も導入しやすいかと思います。
ディテール検討などは初歩レベルで行うのは困難です。このレベルで留めるとは言っても、平面図や立面図などは完全にリンク(平面図の建具の位置を修正すると立面図も自動的に修正されるなど)します。
特に基本設計段階では試行錯誤が続き、図面の整合性も取りづらくなるかと思います。それだけを考えても図面の食い違いをなくせるのでメリットはあります。
またBIMではレンダリングが行えますので、その場で何カットでもパースが作成できてしまいますので、設計者自身・お客さんがイメージを抱けると言う事は大きなメリットがあります。
3. 構造図で導入する
➡意匠図と構造図を比較すると、後者の方が図面の表現は簡単です。
意匠図だと当然モデリングする部材が多くなりますが、構造図であれば部材は少なくて済みます。
また構造体の形をイメージする事ができます。
さらにコンクリートボリューム(数量)も把握でき、Revitの場合は配筋もモデリングできますので、配筋の納まり検討などもできるようになります。
さらに施工者側でコンクリート躯体図を作成する事にも役立ちます。
【海外との比較】
日本でのBIMの普及の状況は海外に比べてかなり遅れています。
例えばシンガポールでは5,000㎡を超える物件では確認申請段階からBIMが必須となっています。
日本では確認申請も近い将来BIMの義務化されると思います。義務化されると相当な淘汰が進んでいくかと思います。
特に無料であるJWWのみで2D作図を行って来た方にとっては、BIMソフトのインターフェースが違い過ぎて使いこなすまでが大変な労力になるかと思います。
BIM普及の遅れの要因の一つに、「ソフトが高額である」事が挙げられます。特に中小企業や個人事業主にとっては大きな投資となり、またソフトの習得に時間が掛かる事が大きな要因です。
ただ海外の企業がBIMの導入で苦労しているのも事実で、アメリカでも従来の2D作図と同レベルで設計図書の作成ができるようになるには4年も掛かった事もあるそうです。
【人材不足】
日本国内ではBIM人材が不足しています。これから日本の人口も減少する一方ですので、建築関係に携わる人口も当然減少していきます。
「BIMオペレータ」でモデリング業務を進めていっても、「果たして納まりを理解しているか」は甚だ疑問で、モデリングしている人が現場経験を経ている事はまれであると思います。
そのため、モデルデータをチェックする人材も必要です。
納まっていない建物を3次元で作成しても何もメリットがないからです。これからの時代は「言われた事だけをこなす人材」は必要ありません。
理想は施工管理を経験して、2次元で白紙の状態から作図もでき、さらにBIMモデリングもできるのが最も無駄がありません。
手描き作図からCADに変わった事による最大の問題は、恐らく手描き図面を経験していないであろうと思われる程の設計図書の品質低下です。
寸法が表記されていない、何の線だか分からないと言った図面は残念ながら日常茶飯事です。
そのため施工図は何十年もなくならない訳で、例えBIM化してもモデリングが現実逃避していては何にもならないのです。
【ファミリ不足】
Revitにおいては「ファミリ」と言われるサッシや家具などの部品データが必ず必要になりますが、メーカーの製品データは従来通りの2DのCADデータのように自由に入手できません。
このファミリを自分で作るのも大変な作業となります。海外では既に相当な部品(ファミリ)数がありますので、この事からも日本でBIMの導入が遅れている要因の一つかと思います。
ただ相当高度な知識・作成レベルの会社もあるので、ファミリ製作だけ外部に委託する事もできます。
以上がBIMに関する大まかな問題点ですが、手描き作図の時代からCADが導入された時も決して楽ではありませんでしたので、「まずは第一歩」が大事かと思います。
手描きしかできない図面屋さんは「干された」ようにBIMが扱えない設計者は同様に「干される」のも近いかもしれません。
これからの時代は「CADオペレータ的な人材」は必要なく、オールマイティな人材が求められています。
もはや「JWWは過去の物」と認識していない方々、「BIMって何?」って言う方はいち早く知識を得る事が大事かと思います。
JWWは無料で使用できる事が最大のメリットでしたが、大手ゼネコンはAutoCADが標準です。
私もCADを初めて使ったのはJW-CAD(MS-DOS)でしたが、独立後はAutoCADしか使用しておりません。
他人と同じ事をやっていても成長はないですから、「如何に他人との差別化を図るか」と言う事を当事務所の最大の命題として業務を進めております。
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